これまでの活動 2008年
2008年キャンペーンへの参加

2008年6月19日,新たなメンバーを加えて,学生主催のシンポジウム『えん罪の構造~福岡事件からみる日本の刑事裁判~』を開きました.

このシンポジウムで,冤罪を作っているのは検察官,警察官,裁判官だけではなく,私たち市民も密接に関係していることを学ぶことができ,刑事司法の問題について,当事者の1人として考えていくきっかけを作ることができました.
福岡現地合同合宿

私たちはそこで,石井健治郎さんと出会いました.彼の姿を目にし,その肉声を耳にしました.すでに91歳という高齢の身を車いすに乗せて現れた彼は,痩せ衰え,写真やVTRでみた姿とは,大きく異なっていました.

しかし,「西武雄」という言葉を発したとたん,即座に口を開きました.

「西武雄」という言葉が発せられるたび,石井さんは,何度も何度も,そう繰り返していました.別れ際に,石井さんの震えるその手を握ったとき,私たちは,この福岡事件を人間の苦しみの問題として,これを伝えねばならないという思うを禁じえなくなったのです.
『真相究明書』データ化の動き

泰龍氏は,この『真相究明書』を,膨大な資料に埋もれながら書きあげ,謄写版印刷で300部刷りあげました.その出版費用を托鉢で集め,法務大臣が変わるたびにこれを送り続けたのです.
この著作は,古川家に残される1冊と,国会図書館,静岡県立大学の他に,石川大学に所蔵されているのみ.そして,古川家と国立国会図書館の各1冊は,損傷の激しさから閲覧禁止になっています.

「少しでも福岡事件を知ってほしい,一緒に考えて欲しい」という一心から,学生はこの著書をデータ化することにしたのです.
関東学院大学学園祭シンポジウム―わが怒りを天に雪つぶて―

結論だけ挙げますと,逮捕後被告人が入れられる警察留置場,いわゆる代用監獄を存続させている捜査過程の問題と,この代用監獄で採取された自白ないし共犯者自白を容易に証拠採用する裁判所の問題という2つの問題が,司法自体の誤判構造を支えていることを指摘しました.

このような悩みの中で,私たちの脳裏をよぎったのが,夏休みの福岡現地合宿でした.石井さんとお会いした時に感じた,彼の苦しみを深く考えるようになりました.

「福岡事件は,死刑は,冤罪は,理論や学問だけの問題ではないのです.
それは,西さんや石井さんにとっては,人間の孤独や苦しみや絶望そのものであり,
古川家の人々にとっては,人間の良心と誠実さの問題だったのです.」
冤罪事件は,死刑の問題と同じく理論の問題だけではなく,まさに人間の問題であると私たちは感じたのです.
石井さんの急逝

「石井さんがお亡くなりになった.」という石井さんの訃報のお電話でした.この写真は,葬儀から2ヶ月後,ようやく気持ちの整理がついたときにおこなった,石井さん追悼集会東京会場の写真です.
追悼集会の準備中に痛感したことは,石井さんがお亡くなりになって,こうして事件関係者全員この世を去ってしまった後,福岡事件は「記憶の風化」という問題が一層強く懸念される事件であるという事実でした.追悼集会後も,この事実は,私たちを悩ませ続けました.私たちの前には暗雲が広がっていたのです.

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